T+1移行に向けた準備:2025年に知っておくべき7つのポイントと対応策
アジア太平洋地域は、T+1決済への移行において転換点を迎えています。主要なグローバル市場(北米、EMEA、英国)が急速に移行を進める中、アジア太平洋地域の企業は国内外での変化に備える必要があります。本記事では、グローバルに取引する参加者はもちろん、地域内のみで取引する参加者も含め、アジア太平洋地域の証券市場に関わるすべての参加者が優先すべき事項をまとめています。
アジア太平洋地域におけるT+1の現状
アジア太平洋全域におけるT+1に関する議論は加速し始めています。2025年7月には香港取引所(HKEX)が「決済の加速化に関するディスカッションペーパー:Accelerated Settlement Discussion Paper」を公表し、オーストラリア証券取引所(ASX)は2024年10月に「主要な検討事項ペーパー:Key Considerations paper」を発表しました。シンガポール取引所(SGX)も近くT+1に関する報告書を公表する予定で、日本やマレーシアでも業界内での協議が始まっています。着実に進展は見られるものの、市場ごとにペースとタイムラインは異なり、地域的な移行の複雑さが浮き彫りになっています。
各市場特有の事情を考慮する必要があるため、2025年後半にはアジアを中心としたT+1 移行の議論がさらに加速し、多くの企業のプロジェクト課題に加わることになるでしょう。企業は、協議への参加、市場固有要件の分析、さらなる変化に向けた計画策定を積極的に進めるべきです。

グローバルT+1がアジアにとって重要な理由
世界的なT+1決済への移行が加速する中、アジア太平洋地域は重要な岐路に立っています。2024年の北米での移行や、現在の英国・EUでの注目は、世界的の市場の準備水準を引き上げています。グローバルに変化のペースが定まる中、アジア太平洋地域の企業は、この変化する環境下で業務の俊敏性を確保するため、今から準備を進める必要があります。2026年以降に迫る準備期限を前に、アジア太平洋地域の企業が円滑なT+1移行を実現するためには、利用可能な時間を活用して、必要なプロジェクト作業を理解し、範囲を設定し、資金を確保することが極めて重要です。
アジア太平洋地域企業が今後1年間で知っておくべき・実行すべき7つのポイント
1. 今すぐ範囲を設定する:30ヶ月は長くない
北米市場がT+1の準備と実行に「30ヶ月」を要したことは広く認知されています。これにはプロジェクトの範囲設定、開発、そして約1年に及ぶテストが含まれます。2027年10月までにT+1導入を目指す英国・EU市場も同様の「迅速な道筋」を辿っています。アジア太平洋地域にとっての教訓は明確です。具体的な地域別期限が公表される前であっても、今すぐT+1プロジェクトの範囲と規模を決定すべきです。
2. 特に英国とEMEA地域では中間期限を見落とさないこと
英国のT+1実施計画では、T+0での重要なポストトレードプロセスを対象に2026年12月を期限としており、、残された期間はわずか18ヶ月と、時間的なプレッシャーはさらに大きくなっています。業界全体では2027年の移行を認識しているものの、この中間期限を追跡している企業は少なく、28%の企業が期限を守れない可能性があります。アジアで英国やEMEA市場の金融商品を取引する場合は、中間および最終マイルストーンの両方に合わせてプロジェクトを進める必要があります。
3. 欧州のT+1導入はアジアでの40%の加速を意味する
アジアではどれほど加速する必要があるのでしょうか。ValueExchangeの調査によれば、アジアの企業はすべての決済指図をT+1の05:59 GMTまでに発行するという英国のT+1移行案に対応するため、指図の約40%を加速する必要があります。この差を埋められなければ、大規模な決済問題や高額な決フェイルペナルティが発生する可能性があります。欧州のペナルティ制度は厳格であり、ワークフローを迅速化できない企業には大きなダウンサイドリスクとなります。

4. 今日からT+0を稼働させる:ローカルでの準備
欧州の実施計画を待ち、欧州向けT+1準備を始めていない企業は53%に上りますが、今できることは多くあります。アジアの企業は、できるだけ多くの取引処理(アロケーション、コンファメーション、資金調達、決済指図の作成)をT+0に移行し、T+1には例外処理のみを残すべきです。同日内のFXや資金調達も、近い将来、ローカル市場において不可欠となる可能性が高く、今からその能力を構築しておく必要があります。

5. 決済規律の規則を過小評価しない
北米と欧州の大きな違いは、決済規律に関する制度です。欧州では、CSDR(中央証券預託機関規則)によるペナルティが存在し、決済の遅延やフェイルは「望ましくない」にとどまらず懲罰の対象となります。英国・EUで取引するアジアの企業にとって、準備不足は相当な金融リスクを意味します。香港やシンガポールといったアジア市場でも、ファイルのペナルティを検討、またはすでに導入しています。今こそポストトレード管理を強化すべき時です。
6. ファンドギャップに注意する:地域内およびクロスボーダー
より多くの市場がT+1に移行する中、アジアの企業はT+1市場とT+2市場のミスマッチの管理に伴うリスクの増大に直面しています。例えば、香港(T+2)での売却資金をロンドン(T+1)での購入に充当する場合、売却資金を受領する前に追加で1日分の資金を用意しなければなりません。これは軽視できないコストであり、不意の負担を避けるためにキャッシュフロー予測と資金管理の改善が必要です。
7. ローカルの導入詳細を注視
準備の多くは今すぐ始められますが、英国やEUの導入計画には、アジアの企業が把握すべき固有の要件(自動部分処理、トレード・シェーピング、PSETマッチングなど)が含まれます。同様に、アジア太平洋地域の各取引所や規制当局も独自のルールを展開する見込みであるため、市場の協議に密接に関わり、早めに計画を調整していく必要があります。
アジア太平洋地域にとって岐路となる年
2024年に北米でのT+1移行を円滑に進めるために業界全体が多大な努力を注いだ後、2025年は一息つく年となるだろうと考えるのは自然なことかもしれません。しかし実際には、特に英国、EMEA、アジア太平洋地域の参加者にとって、T+1へのカウントダウンは大きく動き始めています。2025年末以降の対応期限に間に合わせるためには、今すぐ具体的な行動と計画を進めることが不可欠です。アジア太平洋地域にとってT+1は単なるコンプライアンス対応ではなく、業務の近代化、効率化、そして顧客サービスの向上という戦略的な機会でもあります。早く行動した企業ほど、大きな恩恵を受けるでしょう。
この記事は、The Value Exchangeとの協力により執筆されました。ブロードリッジのポストトレード処理ソリューションについての詳細は、こちらをご覧ください。