イノベーションとオペレーショナル・レジリエンスによる日本の取引ライフサイクルの近代化
ブロードリッジ アジア太平洋地域担当プレジデント デヴィット・ランエイカース 日本の資本市場の進展:グローバル・トレーディング、「Japan FIX Report」
ブロードリッジのアジア太平洋地域担当プレジデントであるデヴィット・ランエイカースは、グローバル・トレーディングに対し、日本の資本市場、およびその近代化とオペレーショナル・レジリエンスを促進する構造的、技術的、運用上の変化について語りました。
日本の資本市場は近代化に推進しています。どのような主要トレンドが市場全体の変化を牽引しているのでしょうか?
私たちは、お客様と4つの分野で協業しています。
1つは市場活動です。日経平均株価は5万1,000円を超える過去最高値を更新し、海外からも大量の資金が流入しており、日本市場はよりグローバル市場になっています。また、日本証券保管振替機構(JASDEC)における構造的・規制的な変化や、日本でのT+1決済がいつ実現するのか、何が必要かといった議論も進んでいます。東京証券取引所(TSE)も、週5日・月22営業日体制への移行を検討しています。
少なくとも取引時間の延長は実施される見込みですが、国際的な慣行との整合性が求められます。ガバナンス改革―所有構造の見直し、透明性の向上、「新NISA」制度への投資拡大、年金・退職基金の運用先拡大など―も市場に影響を与えています。
3つ目はテクノロジーとデジタル・イノベーションです。日本市場は、テクノロジーの変化において追随傾向にありましたが、取引量の多さや国際市場との取引拡大により、ブロックチェーンやAIへの対応が求められています。近年日本でも影響が出ているサイバーセキュリティも、重要な焦点となっています。
これらすべてに共通しているのが投資家行動です。日本市場においても、ようやく貯蓄から投資への移行が確認され始めています。 これは税制優遇、個人投資家とのデジタル・エンゲージメント、そして上場投資信託(ETF)の台頭により促進されています。個人投資家は必ずしも個別株に注目するのではなく、ETFのようなストラクチャード・プロダクトを、市場での裁定取引を増やす手段として捉えている可能性があります。
日本の取引ライフサイクルにおいて、参加者はどのような効率面での課題に直面していますか?
これまで以上に多くの海外企業が日本市場に参加していますが、日本には特有の規制、インフラ、文化が存在します。そのため、日本市場でどのように運営するか、が課題のひとつとなっています。

FAXや数十年前のソフトウェアやハードウェア・インフラの使用は非効率をもたらしています。証券貸借取引への需要は高まっており、すでに先行導入している企業の例もあります。
いち早く市場に参入した証券会社は大幅な収益を上げています。急成長するビジネスを、手作業中心でどのようにスケールさせるかが課題となっています。
実際、ある大手企業ではスプレッドシートで運用している例もありますが、これは拡張性のある方法とは言えません。
自動化、AI、オペレーショナル・レジリエンスは、これらの課題解決と市場間接続の強化にどう貢献していますか?
まず、断片的で手作業の多いプロセスをストレート・スルー・プロセッシング化することが出発点です。
これには、効率的なトレード・ライフサイクルに不可欠でありながら、企業が必ずしも保有していないスキルやテクノロジー能力が必要となります。
当社のプラットフォーム・アプローチは、その解決策の一つであり、取引ライフサイクルの各機能間のインターフェースをよりシンプルにします。当社は、可能な限り標準化を進め、FIXのような標準プロトコルを活用することに注力しています。
JASDECにおける取引所とのインターフェースを考えてみてください。これを可能な限りシームレスかつシンプルにし、ストレート・スルー・プロセッシングを実現することが、取引における生産ラインとなります。

日本はAIなどの技術の導入において慎重ではありますが、着実に進んでいます。意思決定にAIを用いることに関しては慎重であり、そうあるべきです。
一般的にAIは意思決定を行うのではなく、それを支援する役割を担うべきです。当社が今年発表した日本におけるAI導入・実装に関する調査では、多くの企業がまだ初期段階にある一方で、手作業のプロセスを効率化するためにAIの活用を検討していることが示されました。
手作業の一例が、決済における照合作業です。現在は異常の確認は手作業で行われていますが、AIは高速なパターン認識に優れており、異常を抽出するのに非常に有効です。
当社製品では、フェイルの特定と解決を加速するためにAIを活用しています。最終的な判断は人が行いますが、問題はより迅速かつ大規模に可視化されます。日本には、特有のレジリエンス上の課題があります。特に、世界でも有数の地震多発国であることが挙げられます。最近になってようやく、金融当局によってシステム上重要な金融インフラに対するベストプラクティスが定められました。
電子化もその対応を後押ししています。数年前までは、取引所は東京近郊にバックアップを設置することもありましたが、今では当局は「それでは不十分」とし、大阪など離れた場所にバックアップを設置し、その実現性を証明することが求められています。これは容易ではありませんが、ブロードリッジはすでにそのような復旧体制を備えています。
従来、サイバーセキュリティ対策は侵入防止に重点が置かれてきました。しかし、クラウドストライクやAWSの事象が示すように、すべての脅威や障害を防ぐことは不可能です。そのため、現在は復旧に焦点が移りつつあります。「イミュータブル(原状保持)」と「リペイブ(再構築)」、すなわちインシデント発生前の状態に迅速に復元する能力は、防御だけでなく、問題発生後に迅速に立ち直るためのレジリエンスと俊敏性を重視する考え方です。

今後、日本においてより簡素化され、標準化され、レジリエントなエコシステムを実現するためのビジョンはどのようなものですか?
日本市場は間違いなく世界トップ3に入る規模です。ベンチマークとの比較で、日本はどのようにして遅れを取らないようにするのでしょうか?必ずしも先頭に立つ必要はありませんが、他の2つの市場と歩調を合わせる必要があります。ほぼ全ての資産クラスで日本への投資意欲が高まっている現状を踏まえると、市場のさらなる国際化は進むでしょう。
外国資本の流入における課題は、投資家の多くが日本市場の仕組みを十分に理解していないことです。
今後は、より標準化され、グローバルに受け入れられる慣行が広がっていくでしょう。日本でも他の市場と同様に機能するインターフェースが整備され、AIやオペレーショナル・レジリエンス技術の活用においても、主要市場と同等、あるいはそれ以上の水準に達するはずです。今後、日本は非常に大きな国内金融センターというより、よりグローバルな金融センターへと変化していくと考えています。
