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日本の金融業界におけるAI導入
~準備状況と課題、そして今後の展望~

人工知能(AI)は、業務効率化や分析から顧客体験の再構築に至るまで、日本の金融業界を再形成する可能性を秘めています。しかし、多くの日本の銀行や資産運用会社、証券会社にとって、AIは依然として発展途上の取り組みであり、既に浸透している実用的な存在とは言えません。

ブロードリッジが「日本国際金融システムフォーラム 2025」において実施した調査では、業界のリーダーや専門家からの回答をもとに、慎重ながら着実なAIの進捗が明らかとなりました。

主な調査結果

早期導入 ~着実かつ慎重な姿勢~

多くの組織は依然としてAIの探索段階にあり、回答者の約60%が自社のAI導入を「初期段階」と位置づけ、実験やパイロットプログラムの段階にとどまり、広範な導入には至っていないと回答しています。全社規模でのAI導入は依然として稀で、即座に計画を立てることに慎重な姿勢を見せる企業も多く見受けられます。

この慎重かつ着実な進め方は、日本の堅実で段階的なイノベーションを重視する国民性と一致しています。グローバル市場がT+1決済サイクルや高度な業務要件に向けて加速する中でも、日本の金融機関は厳格に管理されたパイロット段階の運用を実施し、価値が実証されてから本格導入に踏み切る傾向があります。

障壁 ~人材、システム、ガバナンス~

AI導入における課題について尋ねたところ、「社内のAIスキルやツールの不足」が最も大きな課題として浮上し、回答者の38%がこれを挙げました。レガシーシステムはさらに障壁となり、約25%が「複雑で老朽化したITインフラにより反復業務の自動化に困難を感じている」と指摘しています。ガバナンスや意思決定プロセスも障害となっており、規制遵守やリスク管理への懸念が根強いことが分かります。

これらの結果から、日本におけるAI導入の主な障壁は技術面だけでなく、人材やガバナンス面にもあることが分かります。自動化や業務近代化の成功には、統合されたデータ基盤と、業務の透明性とリスク管理の両方に対応する責任ある枠組みがますます重要になります。

AI投資はどこに向かっているのか?

日本企業は、AI投資に関しても日本らしい慎重な姿勢を崩していません。回答者の約半数は最初に「リサーチ・分析」の分野に重点を置き、データ駆動型の意思決定力の強化を目指しています。その他の主要な投資分野としては、「データ管理」や「業務効率化」、「リスク管理・不正対策」などが挙げられています。なお、トレーディングと取引の自動化といった分野への投資は優先度が低く、フロントオフィスでの変革的な導入よりも、バックオフィス業務の最適化を優先していることを示唆しています。

このような慎重な取り組みにも関わらず、先進的な企業ではブロードリッジの「OpsGPT」のようなインテリジェント・オートメーション・エージェントを活用し始めています。これにより、複雑なポストトレード業務の処理、フェイルの解消、リアルタイムでの在庫最適化などが可能になります。決済期間の短縮化や取引量の増加が進む中で、オペレーション上の摩擦を予測・防止し、例外処理を効率化し、口座全体を統合的に可視化できるソリューションの重要性は、今後さらに高まっていくと見られています。

ギャップを埋める ~スキルと連携の強化~

これらの障壁を乗り越えるため、企業は「人材」への投資を優先しています。従業員のトレーニングやAIリテラシーの向上が、今後の最も有望な取り組みとして注目されており、これは調査結果において最も多かった回答として反映されています。また、部署横断的な連携や役員の強力な支援が、実質的な変革を推進する上で重要であることも認識しています。一方で、基盤となる技術の刷新は優先順位が低く、日本におけるデジタル・トランスフォーメーションを成功させるには、新たなツールだけでなく、人材や企業文化が同等に重要であるとの考え方を強調しています。

最新の動向としては、より直感的でAI駆動の業務プラットフォームが、反復業務の自動化を通じてバックオフィス業務をより魅力的かつ持続可能なものにし、チームが影響を与える業務に集中できるようにしています。自然言語ツールやエージェント型の自動化の活用により、従業員は反復的な情報照会や例外処理といった作業から解放され、より付加価値の高い業務へと移行できるようになっています。

ベンダーへの期待 ~信頼性、セキュリティ、サポート制~

日本企業が技術パートナーを評価する上で、サイバーセキュリティは依然として最重要事項となっています。これは深刻化するサイバー脅威、過去の世界的なシステム障害、そして持続的な市場の不確実性といった背景を要因としています。セキュリティに加え、企業はデジタル・トランスフォーメーションに関するコンサルティングをますます重視しており、継続的で柔軟なサポートを期待してます。これは、取引上の関係よりも、持続的で協働的な関係を重視する傾向を示しています。

デジタルワーカーや生成AIの導入が進む中で、企業は信頼性が高く綿密に計画された導入プロセスを重視しており、堅牢なデータ保護と明確なガバナンス体制が求められています。異なるシステム間でデータの整合性を維持する統一されたデータモデルに基づく、安全かつ相互運用性の高いソリューションを提供できるテクノロジーベンダーが、日本の進化するデジタル環境において、信頼を得て、市場シェアを獲得する上で最も有利な立場に立つ見通しです。

AIの可能性

今後、日本企業がAIに最も期待するのは「高度な分析」と「意思決定の質の向上」であり、さらに、「業務効率化」や「コスト削減」も、優先度の高い分野として挙げられています。ブロードリッジのポストトレード・プロセシング・プラットフォームでは、生成AIを活用した分析機能が組み込まれており、生成AIや自然言語処理を使って、リアルタイムでレポートの作成やデータの可視化、主要なインサイトの要約などを自動生成できるようになっています。

一方で、予測型AIエージェントや自動化ツールは、業務の在り方を受動的なものから能動的なものへと変えつつあります。例えば、決済のフェイルが発生してから対応するのではなく、フェイルを事前に防ぐ方向へと移行しているのです。これは、持続可能な業務上の優位性を実現する新たな道筋を示しています。

日本独自のペースで前進

日本の金融業界は、AIの導入において慎重かつパートナーシップ重視のアプローチを続けており、とりわけ技術の基盤となるサイバーセキュリティに対しては特に慎重な姿勢を保っています。今後数年間は、人材やガバナンスへの投資に支えられ、リサーチ、分析、バックオフィス機能からの段階的なパイロットの拡大が進む見通しです。テクノロジーベンダーが長期的に成功するには、堅牢なサイバーセキュリティを提供しと、これらのAIツールを効果的に使用する方法についてる適切なアドバイスを提供することが求められます。

日本では、AIの導入における段階的な進歩はあまり注目を集めないかもしれませんが、それは金融業界における堅牢でレジリエントな未来を約束するものです。これにより、企業は業務のあらゆる層にインテリジェンスを組み込むことで、業務の俊敏性と「オペレーショナル・アルファ」を実現できるのです。

(出典:ブロードリッジの「第26回日本国際金融システムフォーラム2025」での調査)

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